テンジン・ケンツェのブログ

南インドのチベット寺院での日々。

ネパール旅行3

1月28日
後輩も回復したので前日行く予定だったダッキンカーリー寺院へ向かう。道中は酷い悪路。以前より道の状態が悪くなっているようだ。この日はお参り日の翌日ということで参拝者は少なく閑散としていた。そのおかげか、以前は本堂の柵内に立ち入ることができなかったのだが今回は入ってよいということだった。何度も来ているが始めて御本尊を間近に見ることができた。柵内では撮影禁止だが、柵の外からなら写真も撮っていいとのこと。生贄の儀式は火曜日と土曜日に行われることが多いとのことだが、本堂内の神像をじっくり見ていると本堂裏から鶏の断末魔が…。仏教徒としては殺生には反対だが、ネパール文化好きとしては全面反対とはいえないし、貧しい人たちのなかには生贄を捧げるときにしか肉を食べられない人もいて、生贄日は家族や親戚揃ってのご馳走の日でもあるという。そういえば昨日ヤギを捧げていた家族の少年も嬉しそうな表情をしていた。この寺院では生贄が多いため、本堂の近くに肉屋さんスペースがあり、そこで捧げた後の動物を解体してくれるサービスもある。本堂は川沿いにあり、そこから丘へ上ったところにはマーター(母)と呼ばれる女神のお堂がある。マーター堂は建物が壊れており、仮の簡素な囲いのみだった。

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ダッキンカーリー寺院本堂、奥の赤いズボンの女性が拝しているのが本尊カーリー女神。

次に向かったのはパルピン村のヴァジュラヨーギニー寺院。山の斜面にある小さな寺院には、1階は赤観音のお堂になっていて、2階にヴァジュラヨーギニー堂になっている。ここの御本尊はビジェーシュヴァリー寺院のアーカーシャヨーギニーと非常によく似た姿をしているが、こちらは特別な呼称はなく単にヴァジュラヨーギニーと呼ばれる。本尊はやはり衣服と装飾でお顔以外あまり見えないが、お祭りで神輿に乗せるお像はそれらがなく、図像を観察することができた。丁度住職がおられたので話を伺うと、彼はパタンのゴールデンテンプルに所属するヴァジュラーチャーリヤ(世襲の在家僧)だという。私がチャクラサンヴァラの研究をしているというと、彼は大変喜んで「私の念持仏はチャクラサンヴァラで、毎日儀式を行っている」と教えてくれた。
その後、すぐ脇にあるチベット寺院に参拝。ここにはパドマサンバヴァが瞑想したという洞窟があり、入り口には彼のものとされる手形が残されている。また、ターラー堂には岩に自然に現れたというターラー尊がいらっしゃり、参拝者が後を絶たない状態だった。
本日の予定はここまでだったが、タクシーの運転手が道中にある寺院と史跡に立ち寄ってくれた。ナーラーヤナ寺院その名の通りナーラーヤナ(ヴィシュヌ)を祀るヒンドゥー寺院だが、ここにもパドマサンバヴァの瞑想窟があった。その後、マンジュシュリーパークと名付けられた公園へ。ここはカップルがたくさんいて一見するとただの公園なのだが、実はこの脇の谷間こそ、文殊菩薩が利剣で切り開いた場所だという。かつてカトマンドゥは湖であり、文殊菩薩が周囲の山切って水を流し、それが肥沃なカトマンドゥ盆地になったという伝説の地である。崖側は切り立っていて結構怖い。その向かいにはジャル・ビナヤク寺院があり、こちらも本堂は倒壊しておりベニヤ板の仮堂で覆われていた。大きな饅頭型をした岩を金属で装飾した御本尊のガネーシャはふくよかでいかにもご利益がありそう。丁度僧侶(おそらくバラモン)が儀式を行っていた。この日はこれで終了、ホテルに戻った。

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文殊菩薩が利剣で切った谷。

1月29日
月曜日はシヴァ神の日ということで朝からパシュパティナート寺院へ。ここはインド圏の重要なシヴァ寺院のひとつ。まずはすぐ近くのジャヤ・ヴァーギーシュヴァリー寺院へ向かう。この寺院の本尊はジャヤ・ヴァーギーシュヴァリー女神だが面白いのは脇侍。ガネーシャとクマーラだというが、両者ともバイラヴァのような姿をしており、ガネーシャが象頭ではなく人の顔をしている。
その後、パシュパティナート本堂前へ、ここはヒンドゥー教徒しか入れないため門の前まで。人混みの先に巨大なナンディ像のおしりが見える。川沿いの火葬場方面へ回り、まずは映画リトル・ブッダキアヌ・リーブス扮するお釈迦様が降魔成道したシーンに使われた木を見る。周囲はシヴァリンガを祀る石のお堂が立ち並ぶが、その木の近くには観音像と仏足石のようなものがあり、少し先にはゴーラクシャナータ寺院がある。ゴーラクシャナータはハタ・ヨーガの大成者であり、仏教の八十四成就者にも同名の聖者が登場する。本堂の混雑とは裏腹に、火葬場から川向かいの丘はとても閑散としていた。上流側の火葬場を抜けた先には大成就者ティローパとナーローパが修行したという洞窟がある。どちらも一畳もないくらいの小さな石窟だが、ティローパが成就した(覚りを得た)場所であり、ナーローパに灌頂を授けた場所だという。チャクラサンヴァラの系譜の師あり、毎日の行で供養を捧げていることもあり、深く恭敬の念を抱く。入り口は鉄格子の扉になっているが、鍵はかかっておらず管理者は「瞑想してもいいよ」と言ってくださった。今回は後輩と一緒だったので数分お祈りしただけだったが、是非今度は時間をとって瞑想なり成就法なりしたい。行の場所はどこでもいいはずだが、やはり先師方ゆかりの場所はお加持の力があるように思う。その後は下流側の燃燈仏を拝したり小さな寺院を見たりしてお昼には見学終了。昼食にホテル・サンセットビュー内にある蕎麦屋さんで美味しいお蕎麦をいただく。この日は最終日、翌日はインドへ帰国のため、ホテルに戻り帰りの準備とお土産などの買い物など。夕方ごろ行った仏具屋のおじいちゃんが近所のセト・マチェンドラナート寺院を案内してくれた。

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大成就者ティローパ、ナーローパの瞑想窟。

1月30日
ホテルの精算をし、空港へ。空港まであと少しというところでまさかのタクシー故障。サンクーやらパルピンへの山道を長距離走らせたせいであろうか…。すぐに知り合いのタクシーを捕まえてくれ、またの再開を約束し別れ、無事空港へ。そして私はバンガロール、後輩はプネーへの帰路についた。

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